前話の「変えようとするのではない。でもほったらかしにする訳でもない」という状態。これができると、封じ込められた感覚の解放が起こり、心や体は勝手に本来の状態に戻っていく。原理はとても簡単です。

でも実践は簡単とは限りません。それは多くの人にとって、今まで自分がやってきたこと(努力して、頑張って何かを成し遂げようとするアプローチ)とは、まるっきり逆のこと。最初は要領がつかめないのが普通です。

そのような心身の解放の技法には、いろいろなやり方がありますが、ヨガに興味がある人ならば、ぜひ瞑想を活用してください。心身の解放を行う上で、瞑想は間違いなく最強のツールです。

楽に座って、上に向けた手の平を、膝の上に軽く乗せる。その手の平に意識を向けて、その感覚を感じる。おそらく、手の平には何かじわーっとした感覚があることでしょう。それをただ感じている状態。その意識の状態が瞑想です。

心や体に生じる感覚と、それに気づいている意識。その「気づいている意識の側に立つこと」が瞑想の秘訣です。瞑想にもいろいろなやり方がありますが、心身の解放のための瞑想では、自分の中の感覚に気づき、それをただありのまま観察している状態になることがポイントです。

普段の私たちは「心や体が自分だと思っている状態」です。それに対して瞑想は「心や体の感覚に気づき、それを見ている側の意識」になります。(いわゆる無心の状態とは、心の動きに捕らわれない意識状態であり、心が無くなることではありません)

「感覚に気づいている意識の側」というと難しそうですが、上述のように、手の平の感覚を感じてみると、すぐに瞑想の感覚をつかむことができます。繊細に手の平を感じているときは、感覚に気づいている意識に自ずとなっています。(手の平を感じる瞑想をするときは、体を動かさないで、じっと座って、最低10分は行ってください。そして、行う前と後での、心身の変化も観察してみてください)

瞑想をするときは「感覚に気づいている意識の側に立つこと」がポイント。手の平を感じる瞑想は、感覚が分かりやすく、そのような意識状態に入りやすいので、瞑想状態を理解する上でとても役に立つ方法です。

ただし、瞑想の効果を高く引き出そうと思ったら、感覚を感じる対象を何にするかも大切です。手の平を感じる瞑想で、気づいている意識の側に立つコツがつかめたら、今度は感じる対象を「呼吸」にしてみてください。

呼吸の観察は瞑想の王道です。呼吸は自覚しなくても自動的に行われる一方で、意識的にコントロールすることもできる特別な機能。呼吸は心と体の両方と繋がり、神経系にもダイレクトに作用します。そして、呼吸は命の現れそのものであり、呼吸することが生きることでもあります。

感覚に気づきつつも、手出しをしないで、ありのままを観察する意識。呼吸を観察する瞑想は、そのような意識の使い方のとても良い訓練になります。実際、呼吸の観察をしてみると、ついつい呼吸をコントロールしようとする自分に気づくことでしょう。あるいは、すぐに呼吸から意識が外れてしまう自分にも気づくことでしょう。

対象に意識を向けて、その状態を保ちつつ、手出しをしないで、そこにある感覚をただありのまま観察する。理屈は簡単だし、数秒程度だったら、誰でもすぐにできます。でも、その状態をキープすることは、決して簡単でありません。繰り返し繰り返し実践することで、だんだんとそのような意識を長い時間保つことができるようになっていきます。それは意識の使い方の訓練であり、それが瞑想です。

ヨガをするなら、瞑想が最も大事な行法です。瞑想は、多くの人が思っているよりも、とてもアクティブで意識的なワーク。心にも体にも多くの影響を与えます。場合によっては、人生に大きな変化をもたらすこともあります。

瞑想は、多くの人が普通に行っていることと全く逆のアプローチです。努力して、頑張って何かを成し遂げようとするのとは正反対。そして、そのような真逆のアプローチこそが、心や体に封じ込められていたものを解放し、私たちを本来の状態に戻してくれるのです。

ヨガをするなら、瞑想が一番大事な行法。今はまだ瞑想の準備ができていない方も、ヨガをするならば、そのことをぜひ念頭に置いておいてください。いずれ本格的に瞑想をするようになったとき、それは新たな人生への歩みとなることでしょう。