何かを感じたとき、何もしないでただ見守っていると、そこにあったエネルギーは勝手に解放されていきます。そのようなエネルギー解放のこと、難しいと思う人もいるかもしれません。でもそれは誰もが経験したことのある感覚です。

たとえば、クシャミをしたくなったときのことを思い出してみてください。クシャミをしても構わない状況で、クシャミを抑え込んで我慢する必要がない。そんなとき、クシャミが出るかな、出るかな、と思っていたら、クシャミをしたい感覚がすーっと消えてなくなってしまう。そんな経験、誰でもあると思います。その感覚こそ、エネルギーが解放される感覚です。

クシャミをしたい感覚が湧き上がってくる。その感覚を抑え込まない、抵抗しない。でも肉体の反応としてのクシャミはしない。そのままの状態をしばらく保っていると、やがてクシャミをしたい感覚がすーっと消えていく。

それは瞑想中の雑念と同じ。心の中に雑念が湧き上がってくる。その雑念を抑え込まない、抵抗しない。でも雑念に反応して思考を始めるようなことはしない。そのままの状態をしばらく保っていると、やがて雑念が消えていく。

このような解放のテクニックを、肉体を対象にして行えば、肉体が若返り、体が軽やかになっていきます。心を対象にして行えば、心が若返り、思考がクリアになっていきます。(ヨガのポーズは肉体の解放を促し、瞑想は心の解放を促してくれます)

このようなテクニックは、ヨガをしているときに限らず、日常のいろいろな場面で応用できます。

たとえば、風邪の症状が現れたとき。特に症状が重くなければ、その症状を抑え込むことなく、抵抗することなく、ただありのままを感じていきます。すると、症状がどんどん変化していき、速やかに「風邪を終える」ことができます。

たとえば、頭が痛くなって、体がだるくなってくる。次に、熱っぽくなって、節々に重だるい痛みが生じる。それから、喉が痛くなってきて、やがて鼻水がたっぷりと出る。それらの症状を抑え込むことなく、むしろ積極的に味わう位の気持ちで感じ取っていく。すると、それらの症状が順々に現れては、過ぎ去っていきます。

それらの症状を一通り味わい尽したら、風邪によるデトックスの完了。心身がすごくスッキリと軽くなります。私の場合、早いときには半日程度で、これらの症状を一巡して、風邪を満了することがあます。

解放のテクニックには、いくつかのポイントがあります。まずは、感覚に気づきつつも、その感覚を抑え込まない、抵抗しない、我慢しない。同時に、感覚に対してすぐに反応しようとしている自分に気づき、その反応をしないでおく。そして、しばらく待つ。これらが出来ると解放が起こります。

一言でいえば、「我慢しないで、反応しないで、待つ」ということです。でも、人はついつい我慢のモードに入ってしまったり、ついつい心や体が反応してしまったりします。あるいは、待つことが出来なくて、すぐに別のことに意識を向けてしまったりします。

「我慢しないで、反応しないで、待つ」のも練習が必要です。最初はなかなか上手くいかないかもしれません。でも、そのような解放のテクニックがあることを知り、それを意識して心がけていると、だんだんと解放のモードに入るのが上手くなっていくことでしょう。すると、風邪の症状ですら、心身のデトックスに積極的に活用できるようになります。

このような解放は、外から見ていると、何もしていないように見えます。でも「我慢しないで、反応しないで、待つ」ためには、意識の力をフルに活用する必要があります。何もしないで待つという選択。それは多くの人が思っている以上に、ものすごく積極的かつ意識的な行いであり、とてもパワフルな変化を引き起こしてくれるのです。

心や体の反応を止めて、意識の力を活用する。それは心身のデトックスを促して、若々しい健康な状態を維持するために、とても有用な技法であり、実はそれはヨガの本質にも通ずるアプローチなのです。

 

(注)風邪によるデトックスに興味がある方は、野口整体で有名な野口晴哉氏の「風邪の効用(ちくま文庫)」を読むことをお勧めします。一口に風邪と言っても、いろいろなケースがあり、特に重い症状のときや、重大な疾患がある場合は、デトックスにならず、医療行為が必要な場合もあります。もし自分の体で試すときには、心身をよく観察して、無理のないように行ってください。