心も肉体と同様に魂の乗り物であり、ツールの一つです。そして心を制御することが、ヨガの最大テーマ。ヨガのポーズ(アーサナ)をするのも、もともとは肉体を通して心を清めることが狙いです。

心というのは、コンピュータと似ています。インプットに対して、何らかのアウトプットをする。ある状況に対して、何らかの反応をする。そのような反応パターンの集まったものを、私たちは「心」と呼んでいます。

人は誰でも成長する過程で、いろいろな反応パターンを身につけていきます。別の言い方をすれば、反応パターンを身につけていくことこそが、成長するということです。

でも、何でもかんでも身につければ良いわけではありません。いらないパターンを身につけてしまう場合もあります。例えば、偏見をもった親のもとで育つと、同じような偏見を身につけてしまうかもしれません。悪い友達と一緒にいると、その悪い友達と同じような考え方が身についてしまうかもしれません。

あるいは、身につけたときは良かったけれど、今ではもう要らないパターンもあるかもしれません。例えば、物がない時代なら、物を大切にとっておく意識が必要だったけれど、物がありすぎる現代では、物を手放す意識が必要だったりするものです。

心が反応パターンの集まりであることが分かれば、心を整える上ですべきことは二つだけ。「いらないパターンを手放していくこと」と「必要なパターンを追加していくこと」です。

それは家の中の状態と似ています。

家の中に何もないと生活が不便です。新しいところで暮らしを始めるとき、必要なものを手に入れて、生活しやすいようにしていくでしょう。そして、必要なものが増えていくにしたがって、生活しやすくなっていくでしょう。

でも、それがあるレベルを超えると、逆に物がありすぎて、不便になっていきます。それでも物を手放さないで、ただ追加するばかりだと、どんどん生活が不便になり、そこで暮らすのがつらくなっていくことでしょう。

心の反応パターンも同じです。

この世に生まれたら、いろいろなことを学んで、生きる上で必要なパターンを身につけていきます。そうすることで、いろんな状況への対処法が身につき、生きていくのが楽になっていきます。それが成長のプロセス。いろいろなパターンを身につけいくプロセスです。

パターン習得の度合いが一番いい状態が成長のピーク。多くの人にとって、それは20代から30代の頃。人生で一番元気な状態です。

それを超えると、今度は物がありすぎる家と同じで、パターンの習得が逆に生きづらい状況を招くようになります。成長のピークを過ぎると、今度は新たなパターンの追加がマイナスに作用してしまいます。それが老化の要因の一つです。

成長も老化も、パターンの追加という点では同じこと。それが適切なレベルまではプラスに作用して、成長に役立ちます。でもそれが必要以上になるとマイナスに作用して、老化の要因になるのです。

心の状態を良くするには、いらないものを手放していくことと、必要なものを追加していくことが必要。家の中を掃除するのと同じです。そして多くの人は、手に入れるのは得意でも、手放すのが苦手。それは家の中のことでも、心の中のことでも同じです。

そして、ヨガが昔から着目しているのが、いらない心の働きを解消していくこと。ヨガの経典には「ヨガとは心の作用を止滅することである」と書かれています。

そのようなアプローチがあること、少し前まではほとんど知られていないことでした。でも、ヨガが世界的にブームになったこともあり、最近は心の掃除に目を向ける人たちがどんどん増えてきています。

掃除がうまくいくと、心身が成長のピークの状態へと戻っていきます。それがアンチエイジング、若返りです。心身を若々しく保ちたければ、心の掃除をしっかりすること。それがちゃんとできるようになると、年を重ねるのが楽しみになります。

愛着のある家を、ちゃんと掃除して心地よい状態に保って、そこでの暮らしを楽しむ。それと同じことを、今の自分が使っている体と心で実践する。ちゃんとヨガをしていると、そうやって心と体をケアしながら、日々の暮らしを楽しむことが出来るようになっていくのです。