いま何をしていますか? そう聞かれたら、何をしているか分かりますよね? たとえば、スマホを手に持っているとか、ブログを読んでいるとか、歩いているとか、食事をしているとか。自分が何をしているかを認識すること、人間ならば誰にでも出来ることです。

では、今の心の動きはどうですか? 何を感じてますか? 何を考えてますか? 自分の心がどう動いているかも、意識を向ければ、誰でもすぐに分かると思います。

肉体の動き。心の動き。私たちは何をしているかを認識する能力があります。当たり前のようだけど、それはとてもすごいこと。自分が何をしているかを客観的に認識する能力は、意識が発達した人間ならでは能力です。

心や体の動きを認識できる意識の力。それはヨガをする上でとても大切。心や体(心身)と「意識」とが別次元であることを理解し、意識の側の視点で心身と関わっていく。それがヨガをするということなのです。

普段の生活において、意識の力を積極的に活用している人はあまりいません。なぜなら、自分が何をしているかを意識的に認識していなくても、心や体は勝手に動いて、必要なことをしてくれるからです。実際のところ、私たちの日々の行ないのほとんど(少なくても9割以上)は、無意識・無自覚で行っているものです。

しかも、ほとんどの人は自分が無意識・無自覚で行っていることに、全然気がついていない。それはあらゆる行為に当てはまるのですが、分かりやすい例として、食事のことを考えてみましょう。

「あなたは、いつも無意識・無自覚のうちに、食事をしていますね。食事をしていることに、気づいてないでしょう」 そんな風に言われたら、どう思いますか? そんな訳ないだろうと思うのが普通でしょう。でも、実際は無意識・無自覚のうちに食事をしている方が普通です。

食事をしているときに、どこに意識が向いているかを考えてみてください。食事は「食べ物を口に運んで、咀嚼して、味覚を感じて、飲み込む」というプロセスですが、そのプロセスに意識が向いている時間は、どれくらいあるでしょう? 

嚥下(えんげ。飲み込むこと)に障害があるような人や、日頃から意識的に食べることを心掛けているような人でなければ、食事のプロセスに意識が向いている時間は、ほんのわずかでしょう。たとえば、次に口に運ぶものに意識が向いていたり、何か考え事をしていたり、人との会話に意識が向いていたり、テレビやスマホに意識が向いていたり。そんな風に、食事のプロセスから意識が外れていても、口は勝手に動いてくれるのです。

試しに、食べ物を口に運んだら、箸を置いて、目を閉じてみてください。目を閉じて、咀嚼して、味を感じて、飲み込み終わってから、目を開けてみてください。これをすると、日頃の食べ方が如何に無意識なものであるかが分かるでしょう。そもそも食べ物の咀嚼や嚥下は、刺激に対応して生じる反射の運動。呼吸と同じで、自覚が無くても、勝手に体が動いてくれる。だから、明確な意図を持って、意識的に食べない限り、無意識のうちに食べているのが普通なのです。

自覚なく食事をしているのが悪い訳ではありません。むしろそれが普通。でも多くの人は、意識的に食べていると勘違いしています。それに気づき、改めてちゃんと意識を向けると、それだけで食生活が変わります。しっかりと意識を向けて食事をすると、よく噛むようになり、しっかりと味わうようなります。そうすると、消化にも良いし、必要以上に食べ過ぎることも無くなります。

食事コントロールができなくて、ダイエットに苦労しているとしたら、いつも無自覚に食事をしているから。食事の最初の2~3口だけでもいいので、目を閉じて食べるのを習慣にしてみるといいでしょう。自分のしていることを自覚する。意識する。それだけで、人は行動が変わるし、体型にも変化が生じるのです。

ここでは食事を例に挙げたけど、それをほんの一例。私たちは日々の行ないの大半を、無意識・無自覚で行っています。ヨガをするということは、無自覚であることを自覚し、出来るだけ意識の側の視点で心身と関わっていくこと。ヨガをするということは、意識的な生活をするということなのです。