ヨーガスートラの原文はインド古語(サンスクリット語)で、その訳文もいろいろあります。ここでは、下記の4冊の訳文を参考にしながら、読み解いていきます。

参考書籍(番号①~④が書籍と訳文の対応を示します)
①やさしく学ぶYOGA哲学 ヨーガスートラ(向井田みお著)
②解説ヨーガ・スートラ(佐保田鶴治著)
③インテグラル・ヨーガ パタンジャリのヨーガ・スートラ(スワミ・サッチダーナンダ著)
④現代人のためのヨーガ・スートラ(グレゴール・メーレ著)


【ヨーガスートラ:1章5節】

①ヴルッティ(考え)は、5つの機能があります。この5つは、クリシュタ(苦悩になる考え)とアクリシュタ(苦悩にならない考え)に分かれます。
②心のはたらきには五つの種類がある。それらには煩悩性のものと日煩悩性のものとがある。
③心の作用には五種類あり、そららは、苦痛に満ちたもの(煩悩性のもの)、あるいは苦痛なきもの(非煩悩性のもの)である。
④心のはたらきには5種類あり、苦しみを伴うものと伴わないものがある。

ポイント1
1章2節で、マインドの「働き」を抑えていくのがヨガであると定義しましたが、ここからは、その「働き」の説明です。仏教に由来する難しい用語を用いた訳もありますが、普通に理解する上では、④のような訳で十分でしょう。

ポイント2
どの訳文でも「五つの働きは、二種類(苦悩になるものと、そうでないもの)に分類できる」と読めてしまいますが、はっきりと原文にそう書かれているわけではありません。スートラを本当にそのまま直訳すると「働き、5つ、悩ます、悩まさない」という程度です。私の解釈は「心のはたらきには5種類あり、(それらはそのときどきに応じて)人を悩み苦しませたり、苦しめなかったりする」です。

【ヨーガスートラ:1章6節】

①プラマーナ(知覚)②ヴィパルヤヤ(間違い)③ヴィカルパ(想像、迷い)④ニッドラー(眠り)⑤スムルティ(記憶) この5つが、ヴルッテイ(考え)です。
②五種類の心のはたらきとは、(1)正知 (2)誤謬 (3)分別知 (4)睡眠 (5)記憶 である。
③それらは、正知、誤解、ことばにより錯覚、睡眠、そして記憶である。
④5種類の心のはたらき(心の波)とは、正しい認識、誤った認識、概念化、深い睡眠、そして記憶である。

ポイント1
訳は文章になっていますが、原文は「プラマーナ、ヴィパリャヤ、ヴィカルパ、ニドラー、スムリティ」と、5つの言葉が列記してあるだけ。難しい用語を使った訳もありますが、簡単な言葉で表せば「①正しい認識、②誤った認識、③(言葉による)概念や想像、④睡眠、⑤記憶」の五つです。(次節以降、これらを一つずつ解説していきます)

ポイント2
「やさしく学ぶYOGA哲学」では、1章5節と1章6節を合わせて、心の5つの働きを下記のように分類して説明しています。

苦悩の原因になるもの → ②ヴィパルヤヤ(間違い) ③ヴィカルパ(想像、迷い)
苦悩にならないもの → ①プラマーナ(知覚) ④ニッドラー(眠り) ⑤スムルティ(記憶)

しかしながら、前述のように、スートラの中に分類が明記されている訳ではなく、5つの働きを、そのように分類することが正しいかどうかは分かりません。

ポイント3
心(マインド)の働きには、大きく3つあります。それらは「思考」「睡眠」「記憶」です。「思考」には「外界との関わりによるもの」と「内面でのこと」があります。そして、外界との関わりによる思考は、「物事を正しく認識するとき」と「誤って認識するとき」があります。それらをまめると、マインドの働きは「①正しい認識、②誤った認識、③概念や想像、④睡眠、⑤記憶」の五つとなります。

【ここまでのまとめ(ボディ、マインド、スピリットの視点での訳)】

1章1節:これから、ヨガの解説をする。

1章2節:マインドの働きを抑えていくのがヨガである。

1章3節:それができると、スピリットが本来の状態になる。

1章4節:普段は、スピリットとマインドが一体化して、区別がつかなくなっている。

1章5節:マインドの働きには、5種類あり、それらは人を悩み苦しませたり、そうでなかったりする。

1章6節:マインドの5つの働きとは「①正しい認識、②誤った認識、③(言葉による)概念や想像、④睡眠、⑤記憶」である。