「アーサナ」「呼吸法」「瞑想」は、要らないものを解放し手放す(=排泄を促す)という点において、それらはすべて同じこと。でも、その対象が異なります。大雑把に言えば、アーナサ、呼吸法、瞑想の順に、より繊細なものが対象となっていきます。
対象が繊細になるにしたがって、感覚を鋭敏に感じる力が必要になるので、だんだんと難しくなっていきます。つまり、体を使ってポーズをとるアーサナは比較的簡単。呼吸法、瞑想へと進むにしたがって、だんだんと難しくなっていきます。
初めてヨガをするとき、ほとんどの人はアーサナに取り組むことでしょう。ヨガをやりだして最初から、呼吸法や瞑想に積極的に取り組む人は少数派。ほとんどの人は、アーサナに興味を持ち、アーサナばかりをやりたがるものです。
アーサナの感覚は、誰でも簡単に感じられるし、その影響や効果を実感しやすい。アーサナに人気があるのは当然だし、それだけでも、ヨガはとても素晴らしい成果をもたらしてくれます。
でも、ヨガに真剣に取り組みだすと、アーサナだけでは物足りなくなります。ヨガをしていると、心身の感覚を積極的に感じとり、自分の状態を冷静に観察するようになります。すると、アーサナだけでは、働きかけているところが限られていることに気づきます。
そのことに気づくと、呼吸法や瞑想の大切さが分かってきます。アーサナではアプローチできない繊細な部分がたくさんあります。そこに働きかけるには、呼吸法や瞑想が必要なのです。でも、最初のうちはそのことが分からない。だから、ついつい「ヨガ=アーサナ」と思ってしまいがちなのです。
アーサナではアプローチできない繊細な部分。それに気づいていないと言っても、それが心身に影響していない訳ではありません。むしろ、繊細であればあるほど、大きな影響を与えているものです。
たとえば、呼吸の質がちょっとでも変われば、それは心にも体にもとても大きな影響を与えます。そのことは容易に想像がつくでしょう。あるいは、瞑想を通じて、自分の中の要らない思考パターンに気づき、それを手放したら、物の考え方や捉え方が変わり、心身の状態だけでなく、人生の歩み方にも変化が起こるでしょう。
呼吸の仕方、呼吸の質、呼吸の深さ、思考の状態、心のあり方、物の感じ方など、呼吸法や瞑想がターゲットにしている部分は、心身の状態に密接に関わっている大切なこと。でも一方で、それらはあまりにも身近すぎて、ついつい目を向けるのを忘れてしまうこと。でも、そこに働きかけると、大きな変化をもたらすことができるのです。
ヨガをするというと、ついついアーサナに目が行きがちです。もちろん、アーサナも素晴らしい。でもアーサナだけでは、限界があります。アーサナではアプローチできない繊細な部分があることを忘れないでください。繊細なものほど、そこへのアプローチが成功すると、より大きな影響力を持つものなのです。
とは言え、繊細なものを感じる力が未熟なうちは、呼吸法や瞑想の影響力が分からないかもしれません。その場合は、まずはアーサナ中心に取り組めばよいでしょう。アーサナを通して、自分の内面の感覚に気づく修練をするのも大切です。
でも、いつまでもアーサナばかりでは、ヨガの「美味しいところ」を知らないままです。それでは、あまりにももったいない。少しずつでもいいので、呼吸法や瞑想にも取り組んでみてください。吸法や瞑想にも取り組むと、単なる美容健康体操ではない、ヨガの奥深いところが理解できるようになります。そして、だんだんと「繊細なものほど、影響力がある」ということが分かるようになることでしょう。