ヨガは心の科学と言われることがあります。現代のヨガは、美容健康体操のようになっていますが、もともとは心(マインド)を如何に制御するかが、ヨガの一大テーマです。

マインドは、コンピュータのソフトウェアのようなもの。あらかじめ組み込まれた処理を自動的に行っています。「何かを考えている」というのは、その場の状況に応じて、これまでに身に付けた思考パターンを働かせて、そこからアウトプットを出そうとしているのです。

このような心の仕組みを理解する上で「マインドセット(mindset)」という言葉が助けになります。

マインドセットとは、習慣となったものの考え方のこと。たとえば、思い込みや先入観、物事を捉える上での思考のクセ、物事の見方や判断基準、価値観や信念などの無意識の思考パターン等々です。

ここで大切なポイントは、マインドセットという言葉には「習慣となっていて、無意識のうちに繰り返してしまう」というニュアンスが含まれていることです。

マインドセットを理解している人ならば、心が反応パターンの集合に過ぎないということは、説明するまでもないでしょう。でも残念ながら、日本語にはマインドセットに対応する単語がありません。日本語だけで考えていると、そのような心の仕組みが理解しづらいかもしれません。ヨガをする人ならば、マインドセットはぜひとも覚えておきたい言葉です。

心というのは、日常的な癖や習慣と同じ。意識的に取り組まなければ、一旦身に付けた習慣は、よほどのことが無い限りそのままです。いつもいつも同じようなことを繰り返して日々を過ごし、やがて一生を終えていく。でも、どんな習慣であれ、意識して取り組めば、変えていく余地があります。それは日常的な癖や習慣でも、マインドセットでも同じことです。

今の自分は、どんなマインドセットを身に付けているでしょうか? そのマインドセットは、なりたい自分になる上で、役に立っているでしょうか?

役に立っているマインドセットなら、それでよし。でも、役に立たっていないのならば、それを手放し、新たなマインドセットを身に付けていく。それが意識的に生きるということです。

マインドセットのことを知らない人は、「心に正直に、心のまま生きるのがいい」とか、「心にも無いことを言うもんじゃない」などと言うかもしれません。そんな生き方を選択するのも自由だけれど、それだと既存のマインドセットに縛られた人生を過ごすことになります。

マインドセットの更新に取り組まなければ、「三つ子の魂、百まで」というような人生になるでしょう。なんとなく、いまの心のままで日々を過ごしていたら、昔から言われている通り、たとえ百歳まで生きても、三つ子の魂のままで一生が終わってしまいます。

でも、私たち人間はマインドセットを更新していく能力をもっています。はるかに成長した百歳になる可能性を秘めているのです。特に、ヨガをする人であれば、意識的にマインドセットに向き合うことは必須だと思ってください。もともとヨガは、心(マインド)を如何に制御するかが大きなテーマ。ヨガをするならば、マインドセットの更新は、当然のように取り組んで欲しいことなのです。