人は「ボディ、マインド、スピリット」の三位一体からなる存在です。

ボディやマインドは、コンピュータのハードウェアとソフトウェアのようなもので、あらかじめ組み込まれた処理を行うようにできています。たとえば、物を食べると唾液が出たり、ほめられるとうれしく思ったりするように、外からの刺激(インプット)に対して、何らかの反応(アウトプット)をするようにできています。

それに対して、スピリット(真我、アートマン、魂、ハイヤーセルフなどと呼ばれる場合もあります)は、命の源泉そのもの。単なる反応をするだけではなく、生命ならではの創造的な働きをする部分です。

前回の話の中で、日頃から瞑想をしていると、ひらめきが得やすくなると書きましたが、それはスピリットの働きが高まるからです。普段の思考はマインドの働きであり、ひらめきはスピリットの働きによるもの。ヨガをする目的の一つは、マインドを浄化して、スピリットからのメッセージを受け取りやすくすることであり、そのために効果的な方法が瞑想なのです。

瞑想することなく、忙しい日々を過ごしていると、マインドのレベルの思考がメインのまま、人生が過ぎていきます。それはつまり、周りの状況に反応しているだけの生き方であり、人間以外の動物と同じです。他の動物たちのように、この世に生まれて、食べて、寝て、子孫を残して、そして死んでいく。それだけの人生でいいなら、瞑想はいらないでしょう。

でも、人間ならではの創造的な生き方をしたいならば、瞑想は絶対にすべきエクササイズであり、それはヨガの実践の根幹となるものです。

日本語では、心、精神、意識などについて語るとき、マインドの働きとスピリットの働きを混ぜあわせたものを指し示している場合が多いようですが、ヨガをするのであれば、それらの切り分けはとても大切な視点です。なぜなら、マインドの働きを抑えて、スピリットの働きを高めていく。それがヨガの目指すべき方向だからです。

スピリットの働きを高めるために、おそらく最も効果的なエクサイズが瞑想です。でもヨガをするのであれば、それ以外にも日々心掛けてほしいことがあります。

たとえば、力みを抜くこと、リラックスすること、他力を信じること、感謝すること、愛すること、喜ぶこと、幸せでいること、等々。生きることが喜びであれば、スピリットの働きは高まるし、生きることがつらくなるようなことをしていたら、スピリットの働きは弱まるのです。

また、スピリットの働きが高まると、生きることの喜びが増していき、逆に、スピリットの働きが弱まると、生きるのがつらくなっていきます。つまり、ヨガをするにしたがって、生きることの喜びが増しているならば、ちゃんとヨガができているということです。感謝の想いがわく。愛を感じる。喜びに満たされる。スピリットの働きが高まるにしたがって、そんなことが増えていくものなのです。

もし長年ヨガをしていても、上に挙げたような感覚がないのであれば、それはヨガをしているのではなく、ただの体操をしていると思った方がいいでしょう。もちろん、それも悪くありません。体操は健康のためにとてもいいものです。

でもヨガは、単なる健康体操ではありません。生命の根源的な働きを高め、自分の本質に目覚めていくプロセスがヨガであり、それがちゃんとできていれば、単に健康になるだけではなく、この世に存在していることの喜びを、より深く感じられる自分になっていくものなのです。

ヨガをするのであれば、スピリットの働きが高まっているか否か、ときどき自問自答してみるといいでしょう。スピリットの働きを高めることがヨガのポイントであり、それこそがヨガから受け取ることができる最高の果実なのです。