前話で説明したように、セルフトーク(心の中のおしゃべり)を意識することも、ヨガの実践のひとつです。でも、そのことを知ったからと言って、すぐにセルフトークに気づいていられるようになる訳ではありません。

例えば、起きている時間が毎日16~18時間あるとして、セルフトークをしている認識のある時間はどれくらいでしょう?

セルフトークを意識することが大切なんだ、と思った人であっても、最初のうちは、一日のうち、ほんの数分でも意識することができたら良い方でしょう。(もちろん、意識できていないときも、頭の中では、常にセルフトークをし続けているものです)

実際のところ、セルフトークのことを教わったとしても、大半の人は、意識するのを忘れたまま、一日を終えてしまうでしょう。そして、そんな日が続くうちに、やがてはセルフトークのことをすっかり忘れてしまい、セルフトークのことを知らなかった頃の生き方に戻ってしまいます。

つまり、セルフトークのことを知ったとしても、単にそれを理解しただけでは意味がありません。実際に活かせるものにしていく必要があるのです。そして、そのために最も有効なエクササイズが瞑想です。

瞑想をすると、普通は雑念がわきます。瞑想をよく知らない人は、瞑想をするなら、雑念のない無の状態にならないといけないと思うようですが、そんなことはありません。

瞑想とは、リラックスと集中を両立した明晰な意識で、揺らめく思考や感情を、ただありのまま見つめること。思考や感情を止めるのではなく、それらをはっきりと認識しつつ、それらにとらわれない視点に立つこと。それが瞑想です。

別の言い方をすれば、瞑想とは、セルフトークに気づきつつも、それにとらわれず、ただ観察する側の視点を維持すること。まさにセルフトークに気づく訓練そのものなのです。

もちろん瞑想の時に、雑念(=セルフトーク)がないシーンとした心の状態になれたら、とても素晴らしいです。でも、そうならないといけない訳ではないし、むしろ雑念があるときは、セルフトークに気づく視点を育む、とても有意義な時間なのです。

人生の大半は、潜在意識の影響下にあると言われています。人生を良くしたいなら、潜在意識を変えることが必要。でも大半の人は、心の表面で「こうなりたい!」と思っていること(顕在意識レベルの願望)と、心の奥で「こうありたい!」と思っていること(潜在意識レベルの意図)にズレがあり、そのために思うような人生を過ごせないでいます。

でも、セルフトークに気づく力があると、潜在意識を変えることができるます。セルフトークは潜在意識の現れであり、セルフトークに気づき、心の中でのおしゃべりの内容を変えていくと、潜在意識に変化が起こります。

例えば、ダイエットをすると決めた人が、こんなセルフトークをいつもしているのを想像してみてください。

「私は痩せる。痩せるために出来ることはたくさんある。痩せるために必要なことを私はどんどんやる。私は痩せて、スタイルが良くなって、素敵な人になる。スタイルが良くなるのが楽しみ。ダイエットをしてるとワクワクする。等々」

こんなセルフトークをいつもいつもしている人ならば、間違いなくダイエットに成功するでしょう。セルフトークは、ただのおしゃべりではありません。それは、その人の人生の進むべき方向を指し示す羅針盤であり、同時にその方向へ邁進するエネルギーにもなっているのです。

セルフトークに気づけるようになり、セルフトークをコントロールできるようにあると、潜在意識に変化が起こり、人生が大きく変わっていきます。

そんなセルフトークの力を意図的に活かしたいならば、瞑想は不可欠なエクササイズ。顕在意識と潜在意識のズレをなくして、意図した人生を創造していく上で、(たとえ雑念が沢山わいたとしても)瞑想は最高のエクササイズなのです。