「マインドフルネス」が広まってきたおかげで、瞑想の価値に気づき、実践する人がどんどん増えています。マインドフルネスについて、Wikipediaには、「今この瞬間の自分の体験に注意を向けて、現実をあるがままに受け入れることである」とか、「特別な形で、意図的に、評価や判断とは無縁に、注意を払うことである」という説明が載っています。

その他にもいろいろな説明の仕方がありますが、マインドフルネスは別に難しくありません。基本となるポイントは3つだけ。「今この瞬間」「感覚に気づいている意識」「ありのままを受け入れる」です。今回は、この3つのポイントを解説していきます。

1.今この瞬間
私たちはすぐに、今この瞬間の出来事に意識が向いていない状態になりがちです。たとえば、過去のことを思い返したり、将来のことを想像したり、目の前にいない誰かのことを思い出したり、どこかに行くことを考えていたり。しかも、多くの場合はそのこと(意識が今この瞬間の出来事に向いていないこと)に気づいておらず、無自覚のうちに意識がさまよっています。

それを改め、いま目の前で起こっていることに、ちゃんと意識を向けること。今この瞬間の体験にフォーカスすること。それが、マインドフルネスの大事なポイント。いわゆる「ビー・ヒア・ナウ(Be Here Now)」の意識です。

今この瞬間に意識を向けるやり方もいろいろあるけれど、簡単なのは、体の感覚に意識を向けること。身体感覚は、常に今この瞬間のものに他ならないからです。だからマインドフルネスを実践するときは、身体感覚にフォーカスをあてる場合が多い。たとえば、マインドフルネス瞑想では、呼吸に伴う身体感覚にフォーカスをあてる方法がよく用いられます。

2.感覚に気づいている意識
私たちは、日々いろいろなことをして、いろいろなことを感じているけれど、実際に意識しているのは、ほんのわずか。肉体の感覚も、心に起こる感情も、気づいていないことの方が圧倒的に多いのです。

たとえば、歩いたり座ったりするときに、手足にどんな感覚があって、どう動いているかを認識していますか? 人と関わっているときの心の動きにいつも気づいていますか? 話をするときに、どんな風に声を出しているか、気づいていますか? 天候の変化が心や体に影響を与えていて、その影響で日々の振る舞いが変わっていることに気づいていますか?

これらはほんの一例。実際にはすべての瞬間、心や体には様々な刺激があり、常に何らかの反応をしています。でも、それらのうちで意識しているのは、ほんのわずか。日常生活の大半は、無自覚のうちに行っているのです。

マインドフルネスでは、いま体験していることにフォーカスを当て、それを意識的に観察します。そして、ここでも役に立つのが身体感覚。体に意識を向けると、今この瞬間の感覚に自ずとフォーカスが当たります。心の感覚にフォーカスを当てるやり方もあるけれど、まずは身体感覚にフォーカスを当てる方が、多く人には取り組みやすい方法です。

3.ありのままを受け入れる
私たちは、自分が体験したことに対して、無自覚のうちに、いろいろと判断しています。たとえば、瞑想をして「その体験をありのまま受け入れましょう」と言っても、ついつい「今日の瞑想はとても良かった」と思ったり、「今日は眠ってしまって、瞑想にならなかった」と思って、落ち込んだりします。そのような価値判断をせず、ただありのままを受け入れるのがマインドフルネスです。

でも、完全に判断を排除して、ありのままを受け入れるのはとても難しい。たとえば「か・わ」という音を耳にした時、「川」と思う。これも判断であり、実際にそこにあるのは、ただ空気の振動の感覚があるだけ。でも外から情報が入ってくると、脳は反射的に無自覚のうちに判断してしまう。判断せずにありのままを受け入れるには、意図的な練習が必要なのです。

そして、ここでも役に立つのが身体感覚。「身体感覚をただ感じる」という意図をもって、体に意識を向けると、判断せずに、ありのままを受け入れる意識になりやすいのです。たとえば、音がしたときも、その音によってどんな身体感覚が生じているかにフォーカスが向いていると、判断することなく、感覚をただ見つめる意識になりやすいのです。

以上の3つ(今この瞬間・感覚に気づいている意識・ありのままを受け入れる)が、マインドフルネスのポイント。その実践はとても簡単です。身体感覚にフォーカスに当てて、それをただ感じていれば、自ずとマインドフルネスの意識状態になります。それだけで、とてもたくさんの効果効能があること、脳科学の研究などからも明らかになっています。

繰り返しますが、マインドフルネスは全然難しくありません。とても単純で、とても簡単です。例えば、楽に座って、呼吸に意識を向けて、その感覚をただ感じる。それだけで、3つのポイントが達成され、マインドフルネスの意識にすぐになります。最初は「それがなんなの?」と思いそうなくらいに簡単なことなのです。

ただし、ちょっと難しい点があるとすれば「継続」です。マインドフルネスの恩恵を受けたければ、2つの継続が必要。「マインドフルネスの状態を一定時間キープすること」と「それを日々繰り返し行うこと」です。やなり、それなりの成果を出そうと思ったら、一定の時間を費やす必要があるのです。

たとえば、身体感覚にフォーカスを当てて、マインドフルネスを実践するとき、少なくとも5分、できれば20分程度、理想的には40~60分くらい、その状態を維持して欲しい。そして、それを継続的に、できれば毎日行ってほしい。

それはつまり、毎日5分以上は瞑想しましょう、ということです。やり方は簡単。座って、呼吸に意識を向けて、その感覚をただ感じ続ける。それだけのこと。マインドフルネスの実践は、全然難しくありません。ぜひ試してみてください。マインドフルネスの瞑想は、人体で一番大切な臓器である脳に直接働きかけるエクササイズですが、その実践は多くの人が思っているよりも、はるかに簡単で楽なことなのです。