ヨーガスートラは、ヨガの世界でもっとも有名な経典であり、2000~2500年くらい前に、聖者パタンジャリによって書かれたと言われています。(ただし、いつ頃書かれたのか、本当にパタンジャリによって書かれたのかなど、本当のところはよく分からない)

ヨーガスートラは、全4章195節のスートラ(詩のような短い文章)からなります。

第1章(全51節)は、ヨガとは何か、その目的、定義、到達点などについて

第2章(全55節)は、ヨガ実践の具体的な方法について

第3章(全55節)は、瞑想についてより詳しく

第4章(全34節)は、ヨガを極めたときに境地について

スートラの1節1節は、詩や格言のような感じで、とても短い文章。195節のスートラ全文でも、10ページに満たない位。書物としては、とても短いものです。

でも短いからこそ、解釈の余地が広くて、ヨーガスートラをちゃんと理解するのは、とても難しい。本当に理解するためには、ヨガの最終ゴールまで極めないと無理だと私は思っています。

ヨーガスートラを解説する書籍は、昔からたくさん書かれています。でも、すべての解説本は、著者の解釈に基づいたものであり、それが正しいかどうかは誰にも分かりません。ヨーガスートラに興味がある人は、複数の解説本を読み比べてみることをお勧めします。

ヨーガスートラでは、ヨガのポーズについては一切書かれていません。だから、ポーズをとることを重視したヨガをしていると、ヨーガスートラのことは忘れてしまいがち。もちろん、健康体操としてヨガをするなら、それで構いません。でも、ちゃんとヨガをするのであれば、ヨーガスートラの教えは、いつも意識しておいた方がいいでしょう。

そんなヨーガスートラについて、少しずつ読み解いていこうと思います。

ヨーガスートラの原文はインド古語(サンスクリット語)で、その訳文もいろいろあります。ここでは、下記の4冊の訳文を参考にしながら、読み解いていきます。(番号①~④が書籍と訳文の対応を示します)

参考書籍:
①やさしく学ぶYOGA哲学 ヨーガスートラ(向井田みお著)
②解説ヨーガ・スートラ(佐保田鶴治著)
③インテグラル・ヨーガ パタンジャリのヨーガ・スートラ(スワミ・サッチダーナンダ著)
④現代人のためのヨーガ・スートラ(グレゴール・メーレ著)

【ヨーガスートラ:1章1節】

①さぁ、これからYOGAを説明しましょう。
②これよりヨーガの解説をしよう。
③これよりヨーガを明細に説く。
④さて、ヨーガの権威ある教えを始めよう。

これについては、特に解説はいらないでしょう。ただ、こんな簡単な文章でも、訳文にこれだけ違いがあるということは、注目に値すると思います。

【ヨーガスートラ:1章2節】

①ヨーガとは、考えの動きを静かに収めることです。
②ヨーガとは、心のはたらきを止滅することである。
③心の作用を止滅することが、ヨーガである。
④ヨーガとは、心のはたらきを止滅することである。

この1節は「ヨガの定義」であり、とても有名です。ヨガをする人ならば、これだけは知っておいて欲しいスートラ。上記4つの訳文を合成すると、こんな感じになります。。

「心・考え」というものがあり、その「作用・動き」を「静かにさせて、消滅させていく」。それがヨーガである。

ポイント1
これまでに、マインドとスピリットの違いをたびたび説明してきましたが、ここでの「心・考え」というのは、マインドのこと。日本語で心というと、マインドとスピリットがごっちゃになりがちですが、それらの切り分けは、ヨーガを理解する上で最重要ポイントです。

ポイント2
作用や動きと訳されているのは「ヴルッティ」という単語ですが、これには「反復するもの」という意味合いがあります。心の動きは、波の動きのように、パターンの反復。その波を鎮めていくのがヨーガです。

ポイント3
心の波を鎮めていくのが、ヨーガですが、ただ波を鎮めるのではありません。反復する心のエネルギーを「消滅させていく」というのが大事なポイント。一時的に鎮めるのと、完全に消滅させるのは、全然違います。ヨーガは心の作用を消滅させていく。それこそがヨーガの神髄なのです。